2007年11月28日

文化的生活

振り返ってみるとどうやって暮らしていたのかわからないほどハードな日々だった。昨年の夏からこの11月までがそうだ。
と書いているのは、なんだかふっと「少し時間ができたかな」という感覚におそわれたからだ。
あっというまにコートを着て暖房を入れる毎日。表参道から明治神宮にいたる道の両側の銀杏の葉もやっと黄金色に輝き始めた。なんだか寒さの到来にほっとするなんてヘンな感じだ。
今年の講演もすべて終了。連載も終了。運転免許も学科試験だけになった。
依頼原稿で年内締め切りはあと3本を残すのみ。
明日までに原稿を10枚、あさってまでに20枚といった胸突き八丁の日々は終わった。
3連休にはマイナス16度を経験し、キーンと冷えた空気の向こうに真っ白な浅間山を見ることもできた。
どこか身体の芯の部分が少しずつ弛緩し始めている。ふと見上げると冬空は底抜けに明るいし・・・。
昨日は松井聡監督の映画「転々」を見る。オダギリジョーと三浦友和の東京散歩のロードムービーだ。偏愛していた「時効警察」の前に撮影された作品らしい。
架空の家族を束の間演じるという感傷が肝なのかもしれないが、個人的には「時効警察」の無意味に徹する姿勢のほうが好みだ。
今夜はサントリーホールでチェコフィルのコンサート。
ズデネク・マカル指揮でドヴォルザーク漬けの夜だった。堤剛のドヴォルザークのチェロ交響曲、それと「新世界」というラインナップだ。
指揮のズデネク・マカルは1968年のソ連のプラハ侵攻から27年間亡命し祖国を離れていたという。私がプラハを訪れた2000年は、すでにそのころの面影はなかったが、ブルドヴァ川にかかるカレル橋と百塔の街は当時と変わらない姿だった。
カフカがプラハ出身であることは有名だが、もうひとり私の好きなミラン・クンデラという作家もプラハ出身である。
東欧は絶えず大国の動向に翻弄されてきた歴史をもっている。スペインやフランス,イギリスなど、他国を植民地化した国(宗主国だった)とはどこか異なる陰影を感じさせるのはそのせいだろうか。
時間ができたら、そして身体も頭も衰える前に、もう一度東欧に行ってみたい。プラハはもちろん、クロアチアのドブロブニクにも足を運びたい。
チェロの音色はなんて生理的なんだろうと思った。全身を晒して演奏する楽器であることを実感する。新世界も、これまでにない豊かな演奏だった。それこそ数え切れないほど聞いているのだが、最高の演奏だと断言していいだろう。
終了後、我々夫婦と娘も交えて、巨大なツリーを眺めながらホテルのバーで談笑する。
ああ、人間やってるなぁって感じ。それほど文化の薫り高い2日間だった。

投稿者sayoko:01:28 |