2006年10月05日
保護命令
カナダから戻るJALの機内で超イケメン(ああ、こんなことばより美の極致といいたい)の香港男性スチュワード、ジョーさんに出会った。
いや、こんなことを書くつもりじゃない。JALに備えてあった読売新聞の社会面にDVがらみの事件が載っていた。そのことを伝えようと思ったのだ。つい横道にそれてしまって・・(汗)・・
「ススキノ幼児死体遺棄事件」と週刊朝日は名づけている。
29歳の稲見容疑者は、今年の四月にDV防止法にもとづく保護命令を受け、妻子と別居中だった。その後容疑者は8月に今野容疑者とその娘2人と4人暮らしを始める。
稲見容疑者はホストクラブで働き、風俗嬢の今野容疑者が客として知り合ったという。知り合って直後から同居を始めた二人だが、稲見は今野にDVをふるい、二人の義理の娘にも身体的虐待を加えた。
9月13日には3歳の次女の遺体を、21日ごろには長女(4歳)の遺体をそれぞれダンボールの箱に入れて、自宅マンションのクローゼット内に遺棄した。ふたりとも発見時には身体中にあざがあったという。今野容疑者も自分の娘をダンボールに梱包するのを手伝ったと供述している。事件発覚は今野容疑者が稲見のDVに耐えかねてホテルに助けを求めたことがきっかけだという。
この事件は多くの問題点を提起している。
稲見容疑者は4月に保護命令を受けた直後から、次なるターゲットを探していたと思われる。多くのDV加害者は妻子と引き裂かれることで、行き場のない不安と怒りを半ば衝動化したまま抱えて、野に放たれる。彼らは、保護命令に違反しない程度のストーキングを繰り返したり、復讐のために妻子を殺したり、妻の実家に放火したりする。人質として妻の姪を殺害した例もあった。いずれもすでに事件化しているので過去の新聞を探してほしい。もしくは今回のように、新たなターゲット(犠牲者)を求めることになる。
稲見は保護命令の出された直後から今野容疑者と同棲を始め、激しいDVを再開している。そして幼い子どもを虐待死させた。
このプロセスに何が不足しているのだろうか。
DV先進国(この中には韓国・台湾を含む)においては、ダイバージョン制度があり、DV加害者更生プログラムに参加するか、それとも刑事罰かを本人が選ぶことができるのだ。残念ながら日本ではこのような制度が作り上げられる見通しはほとんどない。せいぜい、本事件のような保護命令だ。それも不完全であり、被害者は絶えず恐怖に襲われる。どうして被害者が逃げまどわなければならないのだろう。稲見の妻子はおそらくシェルターなどに逃げ、そこの支援員の援助によって保護命令にこぎつけたのだろう。
常識的に考えてほしい。どうしてDVをふるった本人が野放しになっているのだろうか。彼は自由に次の獲物を探すこともできた。
もし、先進国並みのダイバージョン制度があれば、稲見は当然加害者更生プログラムに参加を強制されるだろう。週一回のプログラム参加を拒否したり、さぼったりすればすぐさま裁判所に戻され、刑事罰が課される。
現在RRP研究会で実施しているような加害者プログラムは、彼らの「認知」「考え方」を変えること、そして暴力という方法ではなくパートナーと関係をもてるように「行動」を変化させることを目的としている。最低限、再暴力の防止を図るのだ。
日本ではその効果が云々といわれているが、今回の事件を見ても、なぜ加害者へのアプローチがないのかが不思議じゃないのだろうか。先進国の研究や方法論が山ほど蓄積されているのに、こんな悲惨な事件が起きてもなお、加害者への無策が続くのだろうか。
はっきり言えば、この国ではDVはふるった側はなんの痛痒も感じなくていいシステムになっている。殴られ罵倒された女性だけが姿を隠し怯えながら、子どもも転校させて、時には暴力の後遺症ゆえに就労もままならず生活保護を受けて生きなければならない。
夫のがわは、何の制裁も受けない。こんな女・子どもに優しくない国のどこが「美しい国」なのだろう。少子化を食い止めたければ、結婚してからの女性や子どもが「安心」して暮らせる家族をつくるための政策こそ望まれる。
家族の平和・安全は、多くは男性によって脅かされる。彼らが「歩く凶器」ともいえる腕力を妻子に向かって行使しないための教育・制度が必要だ。少子化対策は男性対策である。
本事件の子どもの命はDV政策の更なる充実によって救われる可能性があった。日本の加害者対策の不備がふたりの女児の命を奪ったのだ。





