2006年02月26日

毒消しのために見た映画?

金曜のダルデンヌ兄弟監督「ある子ども」を見た鈍い衝撃が、すべての意欲を削いだかのようだ。冷たい雨は今日も降り続き、風景をすべてあの映画の画面のように無彩色に変えてしまう。
毒消しといっちゃなんだが、三谷幸喜の「有頂天ホテル」を見た。結論を言おう。
エンタテイメントとしては上質、かつ緻密な作品であったと。しかしだね、残念ながらあの毒を消すほどではなかったのだよ、うん。
よくも悪くも日本人がかかえこめる現実の限界を示している。かなりストレートな性善説に基づいたお話に、韓国料理の辛さには遠く及ばないわずかばかりのわさびを利かせ、そのウイットで笑い転げるわたしたち。
それでもまあ、他の映画よりましかも。

さっそく今日、25日のBlogの感想メールが寄せられた。もちろんお褒めの言葉とともに。
延々と続く残酷な現実、しょっちゅう入る死亡の報告、これはわたしがアルコール依存症の治療施設を転々とするなかでいつも直面してきたものだ。
「ある子ども」は、そのときの感覚をフラッシュバックさせた、ということを今日気づいた。この事後的な覚知、洞察がダルデンヌのすごいところだ。
「息子のまなざし」なんか、半年たってから、そうか!と気づいたことがいっぱいあったんだから・・。
ひとつぶで二度おいしいグリコではなく、1回見たら半年間その毒と謎につきあわされるのだから、超お得かも。
ケン・ローチ監督も似たような現実をイギリスのさびれた工業地帯の家族を舞台に描くのが得意だ。でもその徹底振りにおいてダルデンヌには及ばない。
バックミュージックがないというのも、たしかに私たちは音楽入りの現実を生きているわけではないから当然ではある。ひとはレクイエムの音楽とともに死ぬわけではない。病院のざわめきの中で死ぬのだ。
あと一本「ゲルマニウムの夜」を見れば、ここしばらくの映画への渇望は収まりそう。上野公園の特設劇場での上映らしい。

投稿者 sayoko: 23:18