2005年12月15日
性犯罪者処遇プログラム委員会
14日(昨日)で性犯罪処遇プログラム検討委員会の活動は終了。打ち上げの懇親会、そして法務省の矯正局に場所を移してのアットホームな二次会を終えて寒い中を帰宅。
C-SOP 2005という矯正局のプログラムと保護局のプログラムが一応の完成をみた(ばんざい!)。
それまでわたしは手探りでHCCで性犯罪者のカウンセリングを行っていたのだった。ところが昨年11月奈良で起きた少女誘拐殺人事件を発端とする急激な世論の高まりによって、一気に監獄法の改正、刑務所内、保護観察中の再犯率の高い薬物依存と性犯罪に対してはプログラム参加を義務付ける法律が成立した。
4月以降検討委員として研究会に参加し、11月にはカナダの視察にも参加した。
なんと8ヶ月余りでプログラムが作成されたのだ。すごいことである。後発国の強みとして先進国から多くを学べるというメリットがある。それでも既存の100年近いシステムにメスを入れるようなプログラムの作成は法務省内部における多くのご苦労があったと思う。
細部はいずれなんらかのかたちで関係者の目に触れることもあるだろうが、最大の特徴は「認知行動療法」を基本とする、と明確に記されたことだ。
これまで犯罪をめぐる処遇の方法論がここまで具体的に示されたことなどなかったのではないだろうか。触法精神病棟の方法の多くも認知行動療法(CBT)を基礎にしている。
欧米の先進国(アメリカ、イギリス、カナダ)に範を求めるならば当然数量化された客観的エビデンスが他の方法より数段効果を示しているCBTを採用するしかないだろう。
さて、ではこのことを当のわれわれ臨床心理士、さらには心理職の中心的学会ともいうべき心理臨床学会はどうとらえるのだろうか。
全国の20の刑務所に配置されている臨床心理士のかたたちは、果たして認知行動療法を責任をもって実施できるのだろうか。大学院での基礎的トレイニングの拠って立つ理論的基盤はおそらく認知行動療法ではないと思う。
同じ心理の立場のS先生が述べておられたように、CBTは心理臨床の世界では「少数派」なのである(これは間違っていない)。
今回の性犯罪処遇プログラムの実施は重要なトバ口である。ここから地すべり的に司法における心理職の立場は重要性を増すだろう。というか増すチャンスになるだろう。
その機会の重要性を認識しているひとはどれだけいるのか、こころもとない。
保護監察官、鑑別所、刑務所の心理職は数からみれば臨床心理士の世界ではマイノリティかもしれないが、現実の矛盾の集積を突きつけられるいわば臨床の極北ともいうべき立場にある。そのひとたちのニーズに応えられる臨床心理士会、学会であってほしい(これは不正確だ、学会にしたい)。
ありがたいことに、DV加害者プログラムの実践を積み重ねることで、ファシリテーターの態度の基本が体得できた気がする。
カナダ視察の感想でも述べたことだが、犯罪者の懲罰はシステムと環境が行う(有刺鉄線、監視カメラなど)、しかし矯正にかかわる職員は彼らをひとりの人権を有した人間としてかかわらなければならない。いたずらに迎合するのでもなく、いたずらに教え込もうとするのでもない。変化(change)する可能性を有し、自ら変わろうとする動機をもつことができるひとであるととらえてかかわること。そのような態度こそ必要とされている。
カナダ、キングストンのBath刑務所で庭番と間違えて失礼をしてしまったBill Marshal先生はこう言った。
「彼らはグループにおいてひとりの人間として尊重されることで初めて変化しようという気が起きるのです」
場数が必要なのかもしれないが、適切なSV(グループを経験しながらの)がなければ、参加者を練習台にしてしまうことにもなりかねない。さてさて実施に際しての困難がこれからの課題だろう。
それにしてもすごいことになった。昨年の今頃はまったく想像もしなかった現実が目の前にある。





